セラピューティック・ドラミングは、パフォーマンスやスキルアップのために行うものではなく、自分本来のリズムの発見、自己の癒しと自己成長、自我の強化と自我を超えた精神性のために行います。ドラムは、太古の昔から様々な文明において治癒や祈り、祭りや儀式にはなくてはならないものでした。ドラムを叩くことによってシャーマンや祈祷師など演奏者はもちろんですが、聴く者にとっても"何らかの影響"があったからこそ、ドラムは世界中で使われてきたのです。

以前、東邦大学医学部統合生理学の有田秀穂教授(現名誉教授)の研究室で私が被験者となり、ドラミングによってどのように脳波、および脳内血流に影響があるかを測定して頂きました。その検証で分かったことは、ドラミングは「意識の変化が容易」だということでした。

セラピューティック・ドラミングのセッションでは、実際に打楽器を用いて、ドラムに備わる原初的な力を使い、心理療法の枠組みで様々なレベルに働きかけていきます。

なお、個人セッションで、セラピューティック・ドラミングをご希望の方は、音楽スタジオを借りてセッションを行う必要があるため、前もってその旨をお伝えください。よろしくお願いいたします。
身体レベル

ドラムを叩くためにはしっかりと足腰を安定させ、背筋を伸ばす必要があります。ですからドラミングによって足腰と背骨周りの筋肉骨格系は強化され、地に足を着ける(グラウンディング)ことができるので、からだの土台の形成に役立ちます。腕も使いますから、胸、背中から腕、手にかけての筋肉も強化されます。なお、ドラムを間近で聴くだけでも、足腰と背骨を活性化することができます。


神経レベル

リズムは対極にある二つの要素で成り立っています。心理療法士であり音楽療法士であるゲルトルート・ロースは、「リズムとは、秩序という規則のなかに存在する自由である」と定義づけ、「この二極性のなかにバランスを見出すことが、私たちが心理的な健康と呼ぶものである」と述べています。このような特徴を持つリズムを用いることにより、どちらかの極に居続けることなく自在に動くことと、二極間に動的秩序と動的均衡や中道をもたらすことができるのです。

特に打楽器は、太鼓を打つ時の瞬間的なアタック音とその後に訪れる余韻の二極間の差が大きい、という特性があります。打音は交感神経、余韻は副交感神経を活性化します。そのために、自律神経レベルにおいて、動的均衡をもたらすことができます。


感情レベル

ドラムの音と振動は、私たちに原初的感情と動物的本能を蘇らせます。精神分析で言うところの「イド(エネルギー)」が直接活性化されるのです。心理療法の枠組みで、このイドの力を丁寧に扱うことにより、自分の内側にある攻撃性や衝動を肯定的に実感できるので、自尊心の形成に役立ちます。特にドラミング自体楽しいものですから、人を傷つけると思って抑圧している攻撃性を抵抗なく、昇華した形で表現することができます。またドラムは、力強い音だけではなく繊細な音を奏でることもできますから、言語では表現できない繊細な気持ちも表現することもできます。


心理レベル

ドラムは、リズムを生じさせます。リズムは「構造」と言い換えることができますから、ドラミングはイド(エネルギー)を活性化しながら同時に自我構造を強化することができます。特に他者との境界の弱い人や思春期の青少年にとって、エネルギーを保持する器作りにはとてもいい道具になります。逆に、完璧主義の人や強迫傾向のある人は「ねばならない」という信念体系により自分を律しすぎていますから、ドラミングを通して「正しく叩かねば」という思いを手放し、自分の感情や衝動のままに自然発生的に叩くことにより、人間としてのバランスがもたらされます。

また、同じテンポで同じリズム・パターンを叩いたとしても、人によって微妙に表現の味わいやノリが違います。それはテクニックとは関係がなく、その人自身のリズムなのです。両親や社会から押しつけられたリズムを生きようとすると、自分のリズムを見失うか、自分のリズムを否定してしまいます。ドラミングによって、周りから取り込んだリズムや価値観を見直し、本来のリズムを見つけていくことができるのです。


意識レベル

東邦大学医学部統合生理学の有田秀穂教授により、リズム運動は脳内神経伝達物質のセロトニンを活性化することが分かりました。セロトニンの低下は、「抑鬱」「パニック障害」「引きこもり」「依存症」「行動化(キレる)」に共通して見られます。これらの状態の共通点は「深くくつろぐことができないので、意識が明晰ではなく、平常心でいられない」ということです。ある特定の枠組みで行う意識の集中を伴うドラミングにより、「セロトニン」と人間の意識と関係が深い「前頭前野」が活性化し、平常心と落ち着きを取り戻すことができます。この場合、私たちはドラミングを通して、思考の働きを低下させながらも意識を集中することができるのです。その結果、過去や未来に思いを馳せることがなくなります。時間の感覚もなくなり「今ここ」に意識を向けることができるのです。

科学的な側面ではなくとも、ドラミングが意識に影響を与えることは、太古の昔からシャーマンや祈祷師がドラムを使っていたことからも明白です。ドラムが奏でる倍音と繰り返しのリズムは、日常的な意識状態から非日常的な意識状態(変性意識状態)への移行を促し、自我を超えた精神性への到達を容易にします。その時、内的なヴィジョンや深い洞察、閃きや啓示を受けるかもしれません。


エネルギーレベル

ドラムは、おもに第1チャクラと第2チャクラを活性化します。東洋で言う「丹田」「肚(はら)」に直接響くのです。現代では社会の急激な流れに沿おうとするために、多くの人は交感神経を働かせて思考を過度に使い、日常生活を送っています。しかもパソコンとインターネットの普及により、ほとんどからだを使わず頭脳偏重となり、常にエネルギーは頭部に集中し、人間としてのバランスを崩してしまっています。このような現代だからこそ、ドラムは必要とされるべきでしょう。なぜならドラムの奏でる倍音と振動により、エネルギーが下がり頭が空っぽになり、深いところで落ち着きと静けさを取り戻すことができるからです。「浮き足立つ」「のぼせる」「気が急く」状態から「気が静まる」「気が満ちる」状態に移行しますので、エネルギーのセンタリングに役立ちます。


人間関係レベル

人間関係は、基本的に乳幼児期の母子関係、学童期の家族関係や友人関係が基礎になっています。特に前自我状態の乳幼児期では、言葉によって対話をしているわけではなくノンバーバル・コミュニケーションによって対話をしています。もちろん母親は言葉を使いますが、子供にとっては言葉の意味ではなく、言葉の持つリズムや感情を感じているのです。母親が子供の表現するリズムに共鳴し、かつ子供が母親の表現するリズムに共鳴することによって、子供は母親との絆を感じて安心し、自己の存在を認識していきます。ですから「人間関係の基礎は、リズムである」と言っても過言ではないでしょう。私たちは、人間関係でお互いのリズムに意識を向けることにより、人間関係を改善することができるのです。

また、グループドラミングでは、「同調化の作用」によって言葉を超えた身体的共鳴が起きます。グループとしての一体感を感じることができるので、孤独感や疎外感、空虚感や見捨てられ不安を減らすことができます。


すべてのレベル

「人間関係レベル」でも触れた「同調化の作用」は、人と人を同調させるだけではなく、私たちの様々なレベルを同調させる作用があります。明確な意図を持ち、意識を集中して行うドラミングには、からだ、神経、感情、心理、意識、エネルギーという生命体としての全てのレベルを、同調させ統合させる力があるのです。なぜならば、すべての物質は振動しているからです。ドラミングは、変容をもたらす素晴らしい道具なのです。

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