ボディサイコセラピーは、「からだ」を導入した心理療法です。私たちは、頭で分かったからと言って、すぐに行動を変えることができるわけではありません。私たちには「分かってはいるけれど、やめられない」ということがよくあります。日本語には、「腑に落ちる」「肝に銘じる」「体得する」などの表現がありますが、私たちは頭だけではなく、全身で分かってはじめて本当の意味で「分かる」ことができるのです。

そのことに最初に着目した精神分析家は、ジグムント・フロイドの弟子、ウィルヘルム・ライヒでした。ライヒは、当初、自由連想法などの精神分析の手法を用いて面接をしていましたが、面接を続けるうちに自由連想法だけでは不十分だと感じ始めました。言葉は嘘をつくことができ、それが分析の妨げになったからです。ライヒは、分析の妨げになるものを研究し、精神分析で初めて「性格抵抗」という概念をつくりだしました。特にライヒは、その抵抗が無意識にからだに現れることに着目し、からだに働きかけるヴェジェトセラピーを発展させていったのです。これがボディサイコセラピーの起源です。

日本では、まだ一般には知られていませんが、現在、ライヒから始まったボディサイコセラピーは、精神分析の対象関係学派や発達心理学、大脳生理学、運動生理学、理学療法などを取り入れて進化し、ヨーロッパ、アメリカ、南米などで広まり、社会的に認められています。イタリアでは、臨床で心理療法を行うための国家資格を取得するには、ボディサイコセラピーのトレーニング受講が義務づけられているほどです。

当研究所では、そのなかでも「性格類型から人と理解し、交感神経、自我、立った姿勢でのグラウンディングを強化するバイオエナジェティックス」「対象関係学派から家族などのシステムを扱い、自律神経の力動でワークを進めるバイオシステミックス」「マッサージを用いて、腸の蠕動運動に働きかけ、副交感神経を大切にしてコアやエッセンスに働きかけるバイオダイナミックス」「胎生学と心理学を結びつけたバイオシンセシス」を統合的に用いていきます。

これらの学派に共通するものがあります。それは「からだ」と「こころ」を扱う際、その深層にある生命エネルギーの流れも同時に扱うということです。そのため、すべての学派には「バイオ」という文字がつけられています。慢性的緊張によって鎧化したものを溶かして生命エネルギーの流れを取り戻し、心身ともに柔軟で優美な状態を取り戻すことを促すことが共通の目的となります。

また、ボディサイコセラピーの大きな特徴として、胎生学に基づいているということがあります。言語のみを用いる心理療法は、言葉を発する時期までしかさかのぼることしかできませんが、ボディサイコセラピーでは、子宮内の胎児期にまでさかのぼり、トラウマを解消し、もともと持っている美質や本質を取り戻すことができるのです。

詳細は、「BIPS(バイオインテグラル・サイコセラピースクール)」をご確認ください。

以下は、そのなかの一つ、バイオシンセシスについてご紹介します。
バイオシンセシスは生命を統合させる目的で、ヨーロッパ・ボディサイコセラピー協会初代会長であるデイビッド・ボアデラによりつくられたボディサイコセラピーです。それは、精神医学と心理学のなかに「からだ」という考えを導入したウィルヘルム・ライヒによるヴェジェトセラピーと胎生学のアプローチに基づいています。

子宮で受精卵が細胞分裂を繰り返していくうちに、内胚葉、中胚葉、外胚葉という3つの層になります。それが分化して全身の組織を形作っていきます。内胚葉は消化器系・肝臓・膵臓・肺・内分泌腺などに、中胚葉は循環器系・筋肉骨格系・排出器・生殖器系などに、外胚葉は脳・神経系・感覚器官・皮膚などになっていきます。この3つの層はそれぞれ「感情」「運動」「思考」に関係しています。発達過程における心身の外傷体験により、このからだの3つの層は慢性的緊張(鎧化)に陥るようになります。同時に「感情」「運動」「思考」においても性格の鎧化が生じ、さまざまな葛藤を生じさせ、自由で人間らしい生き生きとした生命力を失わせていきます。

バイオシンセシスでは、基本的な心身再統合手法である、呼吸の解放と感情のセンタリング、筋肉の再調整と姿勢のグラウンディング、アイ・コンタクトと声のコミュニケーションによるフェイシングによって、心身両面における治癒的統合のワークを行っていきます。その結果、私たちが本来持っている有機体としての統一性と生命エネルギーの自由な流れを取り戻し、心身ともに生き生きと感じられるようになるのです。
特徴的なことは、特定の働きかける順番や技術があるというものではなく、セラピストが有機的にクライアントのプロセスとともに歩んでいくことです。バイオシンセシスでは「ある人に有効なことでも別の人には毒になる」ということを大事にしていますので、個々人の状態に合わせてセラピーを進めていきます。

また、バイオシンセシスの大きな特徴は、その人の安全なスペースを大切にし、侵入せずにコンタクトを取って進めていくことです。このような枠組みのなかで、からだの緊張や姿勢、からだやエネルギーの動き、夢やイメージや思考、感情や五感など、さまざまな内面からのメッセージに意識を向け、徐々に内面を深めていきます。そして無意識になった鎧を意識の浮き上がらせ、それを解いていき、今まで鎧のために心身ともに未発達であった部分を内面にある本来の自分(本質)からの欲求に従いながら形成していきます。外界のなかで自分の足で立ち、自分自身の本質からの衝動を適切な形で表現し、人生を歩んでいくことをサポートします。
バイオシンセシス・インターナショナルは、からだと情緒、心と社会、本質的で精神的な面における生命の統合を目的としている治療、教育機関です。1973年以来、デイビッド・ボアデラが中心となり運営されています。 1981年、世界13ヶ国に活動が広まり、ロンドンにセンターを設立しました。1988年にスイス、チューリッヒに活動の拠点を移し、ロンドンでは「エナジー・アンド・キャラクター・ジャーナル」を発行しています。

現在は、バイオシンセシス・インターナショナル、海外支部、ヨーロッパ支部の三体制が整い、ヨーロッパ、アメリカ、アジアの18ヶ国で、ワークショップやトレーニングコースが行われています。センターには36人のコースリーダー(トレーナー・スーパーバイザー)がおり、訓練を受けたセラピストは200人を越えています。1998年にはスペイン、2000年にはブラジル、2002年にはオランダで国際会議が開催されました。

バイオシンセシスは、スイスのサイコセラピー団体設立許可のおりた公認心理療法トレーニングであり、28ヶ国が加わっているヨーロッパサイコセラピー協会に統合された国家団体でもあります。また以下の諸団体にも加入しています。世界サイコセラピー会議、国際サイコセラピー協会、国際ボディサイコセラピー協会、国際オルタナティブ医療協会、文化と創造国際センター、ロンドン科学医療ネットワーク、スピリチュアル精神医学国際協会(パリ)。

代表のデイビッド・ボアデラは、1990年にヨーロッパ・ボディサイコセラピー協会の会長に就任して、ヨーロッパで活動するすべてのボディワーカーとサイコセラピストの交流に努めています。

日本では、1980年から1986年までデイビッドがバイオシンセシスを紹介し、1987年から2006年5月までは、国際トレーナーであるルーベンス・キグネルがその活動を継続しました。また1993年から2006年5月までは5年間セラピスト養成コースを行いました。